「企業の色」と「社員の気質の色」の価値観が合っていることはとても重要な要素です。
働きやすさや幸福感、生産性の向上にもつながります。反対にズレがあると、日々の違和感やモチベーション低下、
離職などの重大な課題につながる場合もあります。
本テーマでは、色彩心理に基づく「カラータイプ理論」を用いて、組織戦略・人材適合・企業コミュニケーションの
実践的なアプローチをご紹介します。
カラータイプ理論は、色彩心理をベースに、カラーコンサルタントの
河野万里子が2009年に開発した性格タイプ分類の理論です。
13色で個人の資質を可視化できる点が特徴で、色のスコアに応じて
「決断タイプ」「創造タイプ」「協調タイプ」「堅実タイプ」の4つに
分類されます。
それぞれの強みやこだわり、さらにタイプごとの
コミュニケーションスタイルを理解することで、
チームワークの向上や組織開発にも幅広く活用されています。
カラータイプ理論について詳しくはこちら
企業にとって、ロゴやブランドに使われる「色」は、単なる装飾的な要素ではありません。
なかでもコーポレート・アイデンティティ(CI)カラーは、企業の理念や価値観を視覚的に象徴する存在であり、
組織文化や風土の“顔”ともいえる存在です。
CIカラーは、社内外へのメッセージとして機能し、「この会社は何を大切にしているのか」「どんな人と共に働きたいのか」といった無意識のレベルでの認知や共感を生み出します。そのため、CIカラーの選定には、企業理念・ビジョン、事業内容、
目指す組織像などとの整合性が求められます。
経営理念・ビジョン、組織文化・風土、STPマーケティング戦略とターゲット顧客におけるカラータイプ理論の整合性を
視覚化したものが下記の図です。
本アプローチは、以下のような課題を抱える企業において役立つと考えます。
・CIカラーが自社の文化や風土と合っていないと感じている
・時代に合った事業戦略を模索している
・社長交代や新規事業など、大きな変化を迎えている
・採用後の定着や社内ミスマッチに課題を感じている
“動きが大きいため発展系・多店舗型経営”
決断タイプの会社が重要視するもの:
グローバル/スピード/チャレンジ/合理的
参考企業:三菱東京UFJ銀行
“一人ひとりの個性と能力を尊重しあう企業”
創造タイプの会社が重要視するもの:独自性/未来志向/洗練/自由/クリエイティブ
参考企業:北九州銀行
“一人ひとりにきめ細やかで丁寧な接客を行う企業”
協調タイプの会社が重要視するもの:ハートフル/親切/気配り/サポート
参考企業:近畿ろうきん
“地域密着、信用第一の安心安定感のある会社”
堅実タイプの会社が重要視するもの:伝統/品質重視/信頼/信用/正確性
参考企業:ゆうちょ銀行
キーワード:インターナル・マーケティング インタラクティブ・マーケティング エクスターナル・マーケティング
◆インターナル・マーケティングとカラータイプ理論
インターナル・マーケティングは、従業員を社内の「顧客」と捉え、そのニーズに応じた働き方や環境を整えることで、
組織全体の成果向上を目指す考え方です。
カラータイプ理論を活かした具体的アプローチ
従業員のカラータイプを知り、それに相応しいコミュニケーション法を取ることで、社内のコミュニケーションが
円滑になる効果が期待できます。
◆エクスターナルマーケティングとカラータイプ理論
企業が顧客へ行う一般的なマーケティングのことを指し、インターナルマーケティングと区別されます。
カラータイプ理論を活かした具体的アプローチ
既存顧客と理想の顧客のカラータイプを分析し、それぞれにあった相応しい接客を心がけることで、顧客満足度が
高まりかつ、クレーム減が期待できます。
◆インタラクティブ・マーケティングとカラータイプ理論
インタラクティブ・マーケティングとは、電話・FAX・オンラインネットワーク・インタラクティブ・テレビといった
テクノロジーを介して、企業(販売者)と顧客(購入者)が直接やり取りを行うマーケティング手法を指します。
カラータイプ理論を活かした具体的アプローチ
広告の配信媒体の色やデザインを顧客のカラータイプに合わせることができます。
カラーによる集団分析とは、カラータイプごとのスコアを集計し、棒グラフで可視化することで、その集団が持つ傾向や
特徴を色彩の観点から把握する手法です。
下記のグラフのように、実際のデータを色グラフにすることで、経営層や主任クラスなどの集団がどのカラー傾向を
強く持っているかを直感的に把握できます。
たとえば、経営陣では「緑(堅実タイプ)」や「紫(創造タイプ)」のスコアが高く、安心や安定感がありながらも
個性やこだわりを重視する傾向がうかがえます。主任クラスは「水色とグレー(協調タイプ)」のスコアが高く、
控えめ且つ丁寧な接客を重視する傾向があり、その2色は経営陣にも上位に来ています。
一方、主任クラスでは「オレンジ(決断タイプ)」のスコアが一番低く、これは経営陣のオレンジのスコアと大きく違います。この違いを踏まえたうえでのコミュニケーションが必要となります。
「気になる色」とは、現在の心理状態や関心の方向性を表す色のことです。「気になる色」に着目することで、組織や個人が
今まさに意識している課題や、注力すべきテーマを短期的な経営戦略に反映させることが可能になります。
《オレンジアプローチとは》
たとえば、ある老舗旅館の経営者層と主任クラスが同じく「決断タイプ」に分類されるオレンジ色に関心を示した場合では、その心理傾向を踏まえて、オレンジが象徴するキーワードに沿った戦略立案が有効であると考えられ、実行に移すことができました。
《オレンジのキーワード》
チャレンジ、仲間意識、社交性、リーダーシップ