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色と物の不思議な見え方―側抑制②:ハーマン格子錯視現象について  前編色と物の不思議な見え方―側抑制②:ハーマン格子錯視現象について  前編


錯 視―その2(側抑制―②:ハーマン格子錯視現象について)


図1. ハーマン格子錯視 ― 
あれっ!?陰があるのかな? 
    (Hermann grid illusion)
 

 前回は、錯視のうちの側抑制という網膜内で起こる特性によって発生する現象を見てきました。今回も、この側抑制についての別の現象を見ていきたいと思います。
 先ずは、図1をご覧ください。黒の正方形が規則正しく並んでいます。別の見方をすれば、黒い大きな長方形に白の線が縦横に等間隔に何本か並んだような図形とも言えます。
この図、よく見ると、白い縦線と横線の交わっている所が、黒くぼんやりと汚れたように薄い陰のようなものがあるのにお気付きでしょうか?
 これは、決して、私がわざと薄く陰のようなものを付けたのではないですし、また、パソコンの画像処理特性や、印刷の場合は、印刷ミスといったものなどではありません。
 これが、ハーマン格子錯視現象によるものなのです(本によっては、ヘルマン格子と書かれているものもあります)。そして、黒い陰のようなものをハーマンドットと言います。
 この現象は、どうして生じるのでしょうか?
 それは、前回お話し、今回も触れていく側抑制によるものなのです。

 前回の復習ですが、前回お話した側抑制とは、「側(そば)を抑制する作用」で、網膜に映った像の輪郭をはっきりさせ、輪郭を強調した上で脳に情報を伝えるための作用でしたよね。
 光の刺激によって、視細胞は反応し、その光の強さに応じた神経信号を送ります。その信号は、いくつかの細胞を経て、神経節細胞へと送られます。その時、同時に、その反応を抑制する信号も周りの神経節細胞に送るのです。この作用が前回お話した側抑制の作用です。
 

図2.視覚情報の経路                                                  

                          網  膜

図3.網膜内で起こる側抑制の模式図

 

 そして、前回は、一方向に直線的(横方向)に並んで明るさが変化するシュブルール錯視(縁辺対比)を扱い、横方向に見た場合のことを図で解説しました。(詳細は、前回分をご参照下さい。) 
  
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  

 でも、本来は、網膜上の像は、一方向だけでなく、平面的に広がっています。側抑制の性質も平面的に広がります。光が当たった部分とその周りで考えるのです。光が当たった部分は、その光に反応し、光の量に応じた情報を送ります。そして、その周りには側抑制が働き、抑制する情報を送るのです。
 実際にそのように反応する細胞が神経節細胞にあります。図5の左側に示したON中心OFF周辺型細胞という細胞がそうです。


 ON中心OFF周辺型細胞は、その中心部分が光に対して興奮性に反応し、周辺部分は抑制性に反応します。この細胞は、暗い背景の中で明るく光る点がある時などに反応します。
 また、神経節細胞には、その逆に中心部分が抑制性、周辺部分が興奮性に反応するOFF中心ON周辺型細胞というのもあります(図5の右の図)。
 これは、先ほどとは逆で、明るい背景の中に暗い点がある時などに反応します。 
 ハーマン格子は、黒い大きな長方形に白の縦横の線が等間隔に何本か引かれた図です。ハーマンドットが生じた所は、暗い背景の中の明るい部分になります。だから、暗い背景の中で明るい光があると反応するON中心OFF周辺型細胞が働くので、説明にもON中心OFF周辺型細胞を説明に用います。
 

 

   (a): 白線の交差していない部分と(b): 白線の交差している部分とを比べてください。
(a)と(b)を比べた場合、+の数は同じですが、-は(b)の方が多いですよね。
このことは、何を意味するのでしょうか?
-は抑制性の反応を意味します。だから、(b)の方が-、すなわち抑制性の反応が強いということになります。脳には、+の興奮信号と-の抑制信号の差引き合計の信号が伝わりますから、 (a)と(b)と比べた場合、-の抑制信号が多い(b)の方が少し暗く、灰色の陰のように見えてしまうのです。よって、図1のようなハーマン格子を見たときに、ハーマンドットが見えてしまうのです。

 このように、ハーマン格子錯視現象も、網膜内で起こる側抑制で説明ができます。

 次に、ハーマン格子の応用例をいくつか挙げておきます。

 

図7. 有彩色のハーマン格子
上の図のように、有彩色にした場合、その色の薄い色の陰がぼんやりと交差点に現れます。

 

図8. 有彩色を組み合わせたハーマン格子
そして、有彩色をいろいろと並べてみました。これも、ぼんやりと陰のようなものが見えます。何色に見えているのでしょうか?

 

側抑制② 後編に続く

 

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